VR(仮想現実)テクノロジーの今

「2016年はVR元年」などとテレビや各種メディアが大々的に報じてきました。なんとなく耳にしたことはあっても、VRが具体的にどのようなものなのかよく分からないという人も多いのではないでしょうか。

VRはVirtual Reality(仮想現実)の略です。コンピューターや電子技術を使って人工的な環境を作り出し、人間の五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を刺激することで本当にそこにいるように体感させる概念や技術のことを指します。頭部にゴーグルのように装着するヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使い、360度全天球の映像の中でユーザーが見たい方向を見られるシステムが主流となっています。

VR人気の火付け役となったのが、オキュラス社が開発したHMDであるオキュラスリフト。ただこれは非常にハイスペックなPCとの組み合わせを要求され、開発デモや商用サービスで利用されることがほとんどでした。手軽にVRを楽しめるようにしたのが、PlayStation4と組み合わせて使えるPlayStation VR(PS VR)。手の届きやすい価格帯と使いやすさで、ユーザーの敷居を低くしました。

ずいぶん身近な技術となったVR。この技術を今までにない形で使った例があります。それが2016年4月に開校したネットを使った通信制高校、N高等学校で行われた入学式です。1期生の入学式は、中継会場にいる生徒がVRヘッドセットを装着して本校の様子を見ながら参加する「VR入学式」という形式で行われ、非常に話題を呼びました。

2017年4月に行われる2期生の入学式はそれがさらに進化を遂げ、MRが導入されました。複合現実ともいわれるMRは、CGなどで作りだした人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、2つを混ぜ合わせた世界を作る技術のこと。仮想世界と現実世界が互いに影響しあうSF世界のような空間を体験できるのが特徴です。装着したホロレンズを通すと、沖縄の本会場で話している校長が東京のサテライト会場内にある壇上であいさつしているように見えるのだそうです。

VRはゲーム市場、エンターテイメント分野ですでに盛り上がりを見せています。今後はそれらだけではなく、N高等学校のような教育分野や医療・ヘルスケア分野、産業分野などのさまざまな業界で目にすることになるでしょう。